POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

2017年度高校サッカー選手権雑感

さてさて。

冬の風物詩といえば高校サッカー、正確に言えば「全国高校サッカー選手権大会」。

毎年、何試合かをテレビ観戦し、将来のA代表候補を品定めする。そんな楽しみを20年ほど続けていることころですが、以下に雑感を。

 

決勝のレベルは高かった?

優勝したのは前橋育英、3度目の決勝進出での初優勝。昨年の決勝、0-5で敗れ翌年にまた決勝までやって来て無念を晴らすという所業は天晴の一言です。一方敗れた流経大柏は夏のインターハイのチャンピオン。今年度もっともレベルの高い決戦で決勝にふさわしいカードだったと言えるでしょう。

試合内容から評価すれば、前橋育英の「丁寧なパスワーク」「素早い攻守の切り替え」「集中力の途切れない体を張った守備」が総合的に流経大柏を上回った妥当な勝利だったのではないでしょうか。

また、前橋育英には飯島陸選手という小柄だけれども決勝までに7得点を奪ったエースFWがおり、流経大柏は決勝で飯島選手にマンマークをつけるという策に出ました。ある意味後手に回ったわけですが、そうした勝負の綾もあったのだと思います。

ひとつだけ技術・戦術的な解説をしておくと、前橋育英のパスワークには余裕がありました。どういうことかというと、足元で繋ぐ・スペースへ出す・放り込む・クリアするなどの選択肢を持って組み立てていたということです。

高校年代でのチーム作りで多いのは、ひとつの戦術に特化するという方法です。ひたすら前線に放り込む、ひたすら足元でつなぐ、ひたすらドリブル突破を狙うetc... 特徴というにはいささか偏りすぎでナイーブとも言えるチームが全国大会でも目につきます。

そういう意味で、前橋育英は他のチームと比較して高いレベルにあり、大人びたサッカーをしていたと評価できるでしょう。しかしながら、本来サッカーは判断を伴ったプレーが前提にあるわけで、そうしたプレーが極端に少ない高校サッカーガラパゴス度は問題にされるべきでしょう。

ガラパゴス化する高校サッカー

高校サッカー選手権の試合時間をご存じでしょうか。全国大会では、1回戦から準々決勝までが40分ハーフで、準決勝以降は45分ハーフ、さらに決勝のみに延長戦が設定されています。ちなみにインターハイは35分ハーフで行われます。

クラブユース選手権やプリンスリーグなど高体連加盟ではないJリーグ傘下のチームが参入する大会では基本的に45分ハーフで行われます。同じスポーツなのに、試合時間がまちまちなのもなんだか変ですね。

また、高校サッカー選手権の交代可能選手枠が今大会は4 → 5と増えました。その効果については、参考として以下の記事をあげておきます。

選手権上位に見られた交代枠5の積極活用-今後は「総力戦」が勝ち上がりの鍵に

たとえば、A代表のW杯では交代枠が3人で、45分ハーフというのが定番です。交代枠が仮に3→5のようになってしまうと、試合運びが全く変わってしまい、競技としてもかなり違った性格を帯びてきます。

簡単に言うと、3人の交代枠ルールでは、「攻撃力+守備力+アルファ」を備えた選手が基本レベルになるということです。つまり「なんでもできる選手」というのがベースにあり、何かに特化した選手は1人起用するのがせいぜいといったところでしょう。

この「なんでもできる選手」というピースが日本でもっとも不足しているのは明らかです。テクニックはあっても守備が弱いとか、足は速いけどパスが下手とか、パスは上手いけどシュートがイマイチとか、運動量はあるけどポジショニングが悪いとか、プレーのバランスは良いけど体が小さいとか...

「なんでもできる選手」が揃っていれば交代枠は少なくて済みます、ポジションを入れ替えても、戦術的な変更にも対応できる技量が備わっているわけですから。しかし、そうでない選手たちを組み合わせる場合は違います。

日本代表もそうした選手たちで構成されており、変化を起こすためには必然的に多く交代選手を使わなければなりません。親善試合では交代枠が多く設定されている(5以上のことが多い)ため、なんとか取り繕うことができているわけですが。

しかしながら、公式の国際試合では交代枠は3であり、だからこそ日本代表は交代選手で流れを変えたり変化をつけたりすることができないのです。

ユース世代の交代枠数拡大がもたらす効果が現状の日本代表の抱える問題を改善する方向にはいかないだろうことは明らかですが、そのあたりのことを日本サッカー協会はどう考えているのか知りたいものです。

 

将来のA代表候補は

今大会で目についた選手といえば、長崎総合科大附の安藤選手(FW)でしょうか。身長はないものの強い身体と高いシュートセンスを持ち合わせており、内定先のC大阪でも早いうちに起用されるかもしれません。将来的には、岡崎選手(レスター)と大久保選手(川崎F)を足して2で割ったのようなプレースタイルを目指してほしいものです。

最後に、今回の高校サッカー選手権は日本代表の大迫選手を応援リーダーとして起用し、「超えろ!」をキーワードに設定していたわけですが、大会を見渡してもやはり大迫選手を「超える」素材はいなかったように思います。

やはり、大迫半端ない! ということで大迫選手(背番号9)の高校時代のプレーを貼っておきます。正直高校生では止められないプレーの数々です。

ではでは。


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