POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

リオ五輪U23|ブラジル戦にみる日本の守備

さてさて。

しばらくぶりの更新ですが、リオ五輪直前ということで、先日のテスマトマッチ(ブラジル戦)で気になった点を書いてみようかと。

今回は守備について。

あの試合についての細かい問題点は以下の記事でだいたい補足されているので、まずは以下の記事を読まれることをお勧めします。

http://www.footballchannel.jp/2016/08/02/post167156/

そのうえで、現代サッカーでオーソドックスとされているゾーンディフェンス(以下ZD)を簡単に解説してみようかと。

1対1で勝てれば問題ない

まず、守備のやり方として、ZDとは全く別の考え方であるマンツーマンディフェンス(以下MMD)という方法がある。

文字通り、相手一人に対してこちらも一人をぶつけるやり方だ。要するにピッチ中で1対1が繰り広げられるわけだ。サッカーにおける守備と攻撃は相対的なもので、個人能力が上回っていれば、MMDで全く問題ない。相手のボールを奪い取って攻めればいいからだ。かつて西ドイツが強かった頃はMMDをベースに体の強さでテクニシャンを封殺していたものだ。

反対に、相手の技術や体の強さがこちらを上回っていれば、マッチアップの中から穴が生じてきて、最終的には局面での数的有利(不利)を作られてしまう。また、基本的には相手についていく守備だから、相手が意図的に動くことによって、全体のバランスを崩されてしまう。

たとえば、極端ではあるけれど、下の図のように左サイドにわざと固まったポジションを取り、右サイドで1対1をやらせることもあり得る。この1対1をメッシにやらせればかなりの確率で点が取れるだろう。

これは極端にしても、似たような発想のもとDFが動かされてしまい守備を崩されるという欠点がMMDにはあった。そうした構造的欠陥のため、時代の流れとともにZDを採用するチームが増えていったのである。

20160804-1

 フォーメーションは「いちおう」という位置づけ

さて、ZDのポイントは、守備者のポジショングにある。個人個人がばらばらにポジションをとっていては、ピッチ全体をカバーできないからだ。そこで、守備隊形を組む必要が生じる。フォーメーションと言ってもいい。

ちなみに、テレビや新聞などでよく「4-4-2」とか「4-2-3-1」とか「3-4-3」とかいう表記を見かけるが、これは試合開始時のスタートポジションのことをいう。

ある特定のフォーメーションは、相手に押し込まれれば形が崩れるし、攻撃時・守備時においても変わるもので、「いちおう」の形だということだ。

実際、最先端トップレベルでは、攻撃時と守備時で違うフォーメーションを採用するのは常識になってきているし、試合状況によって変化させるのも当然。また、選手交代することによって、全体のフォーメーションを変えることもある。つまり、フォーメーションは手段であって目的ではないわけだ。

そうした前提を踏まえたうえで、次にZDにおける守備者のポジショングについて説明していく。

 

ゾーンディフェンスはフォーメーションでやる

先ほど「ZDのポイントは、守備者のポジショングにある」と書いたが、基本フォーメーションが当然にある。

ZDは1990年前後のACミランから始まっていて、基本フォーメーションは4ー4ー2という形。ディフェンス4、中盤4、フォワード2が3つのラインを作って陣形を組み、それぞれが横一列となって、全体が連動して網をかけるようにボールを奪い取る。

このとき重要なのは、守備者がそれぞれのゾーンを守るという考え方だ。下の図のように、それぞれが均等にゾーンを担当しているので、ピッチを偏りなくカバーできる。

これとセットなのが前線からのプレッシングだ。プレッシャーをかけることにより、相手を慌てさせ、選択肢を摘んでいく。パス回しが雑になったタイミングで 網をかけボールを奪い取る。ざっくりいうとそういうことになる。日本だとかつてはゾープレスという名前で紹介されていた。

20160804-2

 

致命的なゾーン感覚の欠如

ZDは味方同士お互いがポジンションを確認しながら、一本のラインとして上下動し、左右にスライドしなければならない。

たとえば、Jリーグでもたまに見かけるのだが、最前線の選手が相手DFのボールを追っかけて、一人果敢にスライディングで突っ込んでいき、ものの見事にかわされるというシーンがある。

これは全くのナンセンスで、自分勝手に動き回った挙げく、自らDFの人数を減らし、みすみす相手に数的有利をプレゼントすることになる。

また、相手が強すぎる場合パニックになって、とりあえずズルズルと後ろに下がってしまうこともしばしばだ。

やっちゃいけないやつである。 愚というやつである。 こうした守備時のポジショニング感覚を欠いたたプレーが日本人選手にはとても多い。

以下にいくつか例を挙げてみる。

●その1

[caption id="attachment_100" align="alignnone" width="400"]20160804-3 最後尾のDFはペナのラインまで上がるべし。それと最後尾の2人はなぜくっついているんだ。ポジショニング悪し。[/caption]

 

●その2(以下は連続写真)

[caption id="attachment_97" align="alignnone" width="400"]20160804-4 おお、めずらしくラインが整っている。[/caption]

 

[caption id="attachment_98" align="alignnone" width="400"]20160804-5 ん?間に入られた。でも誰かしら止めるよな。[/caption]

 

[caption id="attachment_99" align="alignnone" width="400"]あれれ?ぶち抜かれてる??うそだろ??? あれれ?ぶち抜かれてる??うそだろ???[/caption]

 

日本は守備戦術で25年遅れている

紹介したキャプションは先日のU23テスマトマッチ(ブラジル戦)からピックアップした。

ネイマール相手だから仕方ないといえば仕方ないのだけど、これだけ守備の基本ができていないと、負けるのは当然。

先に、「ZDは1990年前後のACミランから始まっていて」と紹介したが、U23日本代表は25年前に一世を風靡し、今やスタンダード中のスタンダードなったZDをいまだに使いこなすことができないレベルといえる。

もっと言えば、A代表ですらその域に達していないのだ。

たとえば、トルシエ時代は選手をロープでつないで、距離感を一定に保ったまま動くというトレーニングをしていたし、現代表監督のハリルホジッチも同じようなトレーニングをしていると聞く。

つまり、キホンのキから始めましょうということなのだ。

この25年間でZDは進化を遂げているが、日本のサッカーレベルはその領域には程遠く、25年遅れでキホンのキから始めざるを得ないという有様なのである。

それにしても不思議なものだ。

オーソドックスなZDのやり方を学ばずにプロになってしまうという状況は。

それとも学んでいるが、できないのか。

はたまた、学んだ内容がデタラメなのか。

謎である。

 

以下の記事。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160803-01629953-gekisaka-socc

室屋選手の言うように1対1はもちろん大事なんだが、それにプラスしてやるべきこともたくさんあると思う。初戦のナイジェリア戦では、守備のラインがきちんと整っているかを注視したい。

 

 

最後に、究極に洗練されたZDの例を紹介しておこう。

[caption id="attachment_106" align="alignnone" width="400"]アトレティコ・マドリードの守備。並びが美しすぎる! アトレティコ・マドリードの守備。並びが美しすぎる![/caption]

オリンピック開幕直前につき、こういう見方もあるよということで紹介しました。


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