POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

日本代表|W杯最終予選|イラク戦評(1)

さてさて。

サッカーW杯アジア最終予選の第3戦。相手はイラク。第2戦までのGLの上位に付いては行くためには、絶対に勝利が必要な一戦。

当初、日本の入っているGLは、オーストラリア・サウジアラビア・日本が3強、UAEイラクがやや力が落ち、タイはさらにその下というパワーバランスだと考えられていました。ところが、日本は初戦の負けを機に混乱状況へと陥り、GL中位として戦わざるを得ない状況に。

一方、対戦相手のイラクは、良い戦いを見せるも開幕からの2連敗。国際情勢における逆風は、国際サッカー界にも同様に吹いており、イラクは自国での試合を禁じられている状況においての戦い。他国はホーム&アウェーでやるところ、イラクは第三国&アウェーというハンデキャップマッチ。

日本は自分たちの問題による失速、イラクは国際情勢における逆風と問題のハードさは異なるけれど、それぞれ追い風を受けられていない中での対戦です。

唯一の収穫は「勝利」

結果は2-1の勝利。

そしてこの試合の唯一の収穫は「勝利」したという一点に尽きるでしょう。つまり、試合内容や監督の采配も含めて選評をすれば「しんどいね」と言わざるを得なかったということです。

まずは、その「しんどい」点をいくつか挙げてみましょう。

  1. 本田選手は90分持たない
  2. 岡崎選手は焦っている
  3. 長谷部選手は下降線
  4. DF陣からのビルドアップができない
  5. サイドバックのミスが多すぎる
  6. 相変わらずの杜撰なポジショニング
  7. ハリルが動くとチームが動揺する

次に、これらの点について少し解説を。

1.本田選手は90分持たない

本田選手の起用されるサイドの上りめのポジションには、必要な能力がいくつかあるのだけれども、それは、

  • 上下動できるスタミナ
  • 縦への突破力(からのクロス)
  • カットインしてのシュート力
  • サイドでタメをつくる能力(ゲームメーク)
  • 相手DFの裏へ飛び出す能力

などで、トップレベルの選手はこれらを備えたうえで、さらに飛びぬけた特徴を持ちます。本田選手について考えてみると、「サイドでタメをつくる」の基準を満たしている程度でしょうか。

「シュートチャンスに顔を出す機会が多いし、それって本田は良い選手ってことじゃん」と言う人もいるかもしれません。でも、それはサイドのポジションを放棄してゴール前に陣取っているからそうなっているわけです。そのときには、本田選手が本来いるべきポジションがぽっかり空いてしまっている。

本田選手がシュートをブロックされたりして、相手ボールになった時には、その空いたスペースを上手く使われて中盤までは簡単にボールを運ばれてしまいます。そういう意味で、サイドの選手が果たすべき役割を果たしていません。彼にボールが渡った瞬間に全体がスピードダウンする点も問題でしょう。

さらに言えば、最大のネックは運動量が少なく、90分間持たないという点。現代サッカーは「スピードを伴った運動量」をベースに構築されているので、動けなくなった選手がスペースを埋めきれなくなった時点から、そこを始点にして徐々に組織が瓦解していきます。

というわけで、サイドで起用するにはリスクが高すぎるというのが、僕の意見で、起用するのであれば、そこまで運動力を問われないワントップのCF。これ一択でしょう。

2.岡崎選手は焦っている

岡崎選手は所属するレスターでなかなか出場機会を得られない状況。

FWが出場機会を得るための信頼を勝ち取るにはまずゴール。数字が必要。というのは当然で、だからこそチャンスがあれば自分でシュートを打ちたい。それは当然すぎるくらいわかるのだけれども、結果的に視野が狭くなりチャンスをつぶす機会が増える。そんな負のサイクルに岡崎選手は陥っているように見えます。

イラク戦でも、サイドでボールを持ち簡単にクロスを上げていればチャンスになったであろう場面がいくつかりました。また、シュート時も力みが感じられ枠を捉えきれていません。これでは周囲の選手からも信頼を得られないでしょう。

ただ彼の身長やプレースタイルからすると、ワントップで起用するのは難しい。身長も低いし、ドリブル突破からのシュートもあまり期待できない。相棒がいて自分も活きる。そういうプレーヤーなわけで、FWとして起用するなら2トップの一角が望ましいと思います。

3.長谷部選手は下降線

長谷部選手は長年代表のキャプテンを務め、攻守のリンクマンとして活躍してきました。とくに2010年のW杯では、阿部選手とともに中盤の守備の構築に多大な貢献をしました。そんな偉大なるキャプテンももう32歳。運動量・スピードの低下は一目瞭然です。

攻守に関わるリンクマンとしてのボランチをやるうえで、じつは体力の低下がもたらす弊害はとても大きい。ボランチはフィールドの中央でボールを受けることが多く、それこそ常時周囲360度に注意を張り巡らす必要があるわけですが、その集中力を可能にしているのは体力的な余裕です。

体力が落ちると集中力も途切れやすい。走りながら考えることができない。これまでの2戦とも長谷部選手は致命的なミスを犯しています。自分がボールをコントロールしている余裕ある状態から、なぜか敵へプレゼントパスを送ってしまうというミスです。ボランチであれば絶対にやってはいけないミス。これが顕著にみられるということは、残酷なようだけれど、もうそのレベルではプレーできないというひとつの表れだと思います。

「キャプテンを先発から外す」という決断は非常に難しいのだろうけれど、このままでは「予選を突破できなかった理由」のひとつが「キャプテン」になってしまいかねない。英断が求められているのではないでしょうか。すでに致命傷レベルの問題であることは明らかです。

 

日本代表|W杯最終予選|イラク戦評(2)に続く


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