U20W杯|ベネズエラ戦評
さてさて。
GLを3位突破し、決勝トーナメント1回戦の相手は、優勝候補の一角ベネズエラ。
やはりの決定力不足
日本代表は、今大会で初めて90分間を無失点で抑え奮闘しましたが、気力・体力の消耗は激しく、延長戦前半にCKから失点し、反撃もかなわず0-1での敗退となってしまいました。実力差はスコア以上にあり、試合を通して押される展開が見られましたが、敗因はやはりチャンスで決めきれなかったところにあるでしょう。
とくに後半12分の決定機(堂安のスルーパス→高木)で、GKの正面に打ったシュートはいただけない。ああいった、難易度の低い決定機を決められなければまず負けてしまうというのが、世界大会の常識なのですから。岩崎選手もいくつかの決定機を外していましたね。
堂安選手のバー直撃FKは技術の高さの証明であり、決定力不足というのとは違うような気がします。ちなみに、当ブログでは「決定力」について、以下のエントリーで解説していますので、ご参考までに紹介しておきますね。
機能した守備
決定機に決めきれない攻撃と比較し、守備面はかなり機能したと言えるのではないでしょうか。これまでの3戦でスピード感・フィジカル・間合いに慣れてきたのか、パニックを起こす回数が随分減ったように思います。サイドバックとボランチのメンバーがある程度固定されてなのもその理由のひとつでしょう。
このチームはアジア予選の段階から、「キャプテンの坂井+誰か」というスターティングで固定されてきましたが、坂井選手はバランスを取ったりボールを散らすことはできても、絶対的な守備力が不足しており簡単に中盤をドリブル突破され、さらには攻撃のスイッチとなる縦パスもほとんど見られませんでした。
W杯の初戦である南アフリカ戦でのボランチは、「坂井+板倉」だったわけですが、ここでも中盤の守備力の不足は明らかで、第2戦からは板倉が怪我したこともあり、「市丸+原」が基本の組み合わせになりました。そこでようやく最低限の守備力と最低限の縦パスが確保されるようになったわけです。
サイドバックについては、W杯の全4試合においてウィークポイントとして対戦国から常に狙われ続けいていましたが、左サイドは本来CBである杉岡選手が入るようになって、1対1での守備力が向上しました。結果的にはこの起用がチームに安定感をもたらしました。 →イタリア戦ではポジショニングミスから1失点目の原因になったが、それ以外は安定していた。
監督についての評価
内山篤監督について評価できるところといえば、小川選手や岩崎選手のような高校サッカー部出身のFWを代表に定着させたことでしょうか。国際大会では泥臭く戦える選手が必要であり、そうした基準で選手をセレクトし、起用し続けたことには一定の評価があってよいと思います。
ただ、ボランチやサイドバックのセレクトについては、着手が大幅に遅れたと言わざるを得ません。アジア予選では無失点で優勝したわけですが、対戦国のシュートミスに助けられていたのは明らかで、ピンチはボランチ及びサイドバックの守備力不足が招いていることは明らかでした。
結果的に、W杯本大会では、全4試合で失点は6と無失点試合はひとつもなく、ストロングポイントと言われた守備力はじつはストロングポイントでなかったことが明らかとなりました。反対に攻撃は個の力不足と言われることの多い日本にあって、堂安選手が個の力を見せつけました。
小川選手が不測の大怪我で離脱したことも苦戦が続いた要因ですが、彼が不在になった場合の組み合わせを想定していたかというと、明らかにそうではなかった点も準備不足にあたるでしょう。どう考えても「岩崎+久保」では身長が足りず、前線でボールを落ち着かせることは困難でした。
「岩崎+田川」や「岩崎+高木」であっても、ターゲットマンタイプの選手ではないため、前線でのタメはつくれず、攻撃は単発に終わり、連続性が保てませんでした。小川選手の代役を見つけるのは無理だとしても、ポストマンタイプの選手を選んでおくという選択肢はあったでしょう。
準備不足な点とGL突破という結果を併せて考慮すれば可もなく不可もなくといったところなのだと思います。対アジア仕様と対世界仕様のダブルスタンダードを求められるという日本ならではの苦労も準備をより難しくしている一因でしょう。
選手への苦言
U20の対戦相手に、
Jリーグで経験しないパススピードだった
みたいな経験をさせてもらっているとすると、Jリーグのレベルって。。。と悲しくなりますが、それが現実ならばしょうがありません。今のところは世界大会での経験を糧に、トップレベルを想定してトレーニングに励んでもらうしかないと思います。環境は選手たちのせいではないのであれですが、それにしてもファールスローはどうにかならないもんでしょうか。
ベネズエラ戦ではかなりの回数ファールスローを取られ、相手ボールになっていました。ファールにならなくとも、ぞんざいにスローしてすぐ相手ボールになってしまうことが多く見受けられました。チームとしてのスローインの受け方が考えられていたのかどうか、疑問です。
相手との力関係で発揮できない力というのは、本物ではないと言えるでしょうが、それでも対戦のなかではどうしようもなく起こってしまいます。ところがスローインは「きちんと投げる」という相手のいない状況でできることなので、大過なくやってもらいたいものです。草サッカーレベルのミスなど言語道断でしょう。大体において細部(基礎)がしっかりしていないチームというのは勝負弱いものです。
総括
5大会ぶりのU20世界大会出場で、なんとかGLは突破できたのは評価できるでしょう。またJ1レベルで出場機会を得ている中山、原、富安(昨季J1)選手らが、ある程度守備で戦えたおかげで、失点こそしたもののゲーム自体が壊れずに済んだという点が大きかったように思います。堂安選手は個人能力を発揮しましたが、これからの環境によっては、他国の選手に差をつけられてしまう可能性があるでしょう。
必要なのは、「最低限の守備力」と「打開できる個の力」そして「決定力」ということになりそうです。これまでも繰り返されてきたお馴染みの課題がそのまま立ち現われてくるわけです。これまでと同様にやっていても解決できない問題なのですから、吹っ切れたアプローチを期待したいものです。
たとえば、TV番組「Foot×Brain」で前卓球日本代表監督がこんなことをおっしゃっていました。
日本のサッカーは世界ランク...50位くらい? それで国内で育てたらやっぱり50位くらいに育つでしょう。トップを狙うならその環境でやらないと。若手は海外で育てないと。
卓球は選抜した若手をドイツリーグに放り込んで、何年かかけて世界のトップレベルを経験させ、今度はその選手たちを国内に呼び戻し生きる教材として活用・強化してきたそうです。サッカーに適用するにはアレンジが必要になるでしょうが、見逃せない視点ですね。考えてみればテニスの錦織選手もアメリカの環境で育ってますしね。
ではでは。
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