POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

日本代表|W杯最終予選|オーストラリア戦評(2)

さてさて。

前エントリー日本代表|W杯最終予選|オーストラリア戦評(1)では、少し視野を広げて、日本代表の現状とその位置について書きました。

今回は、対オーストラリア戦の内容にフォーカスして、戦評をしていきたいと思います。

良かった点

  1. 守備のとき適切なポジションが取れるようになった。
  2. 攻撃時に最前線が渋滞することがなくなった。
  3. 原口選手の躍動

この2点については、それぞれの相互作用によって向上したと言えます。

ポイントは、本田選手を右サイドではなくワントップで起用したことです。彼はもう右サイドを上下する体力はなく、また、中央に入りすぎる傾向があるので、ポジションとしては中央の選手とほぼ変わらないプレースタイルでした。

しかし、それでは攻めの時も守りのときも常に右サイドに空白が生じます。つまり誰もいない。一定レベル以上のチームは、すぐにそこを見抜きます。というかスカウティングによって、事前にバレています。そこをポイントにしてボールを運べばいいと。事実、日本代表はあっという間にDFライン近くまでボールを運ばれ、すぐにピンチになります。

そこで今回のオーストラリア戦は右サイドに小林選手を起用した。彼は得点もとれるし、ポジションのバランス感覚もあり、体力もある。それによって右サイドの空白がなくなった。守備の時に適切なポジションが取れるようになった。それこそがこれまでとの違いです。でも、これって物凄く普通の当り前のことなので、ようやく振り出しに戻っただけ。これまでがいかに出鱈目だったかがよくわかります。

「2.最前線が渋滞しなくなった」理由は、日本が全体的に引いて守っていたためボールを奪う位置が低く、相手ゴール前には本田選手しかいないという状況が多かったからです。相手との実力が拮抗していたり、相手が上だったりすれば、必然的に最前線は渋滞しなくなります。それが結果的に良かった。意図的にこれをコントロールできるといいんでしょうが、これは選手というよりは監督の仕事のような気がします。

3.については、上がり目のサイドのポジションに相応しい選手がようやく台頭してきたかなという感じです。あれだけ攻守に走ってくれると味方は楽でしょう。ほかの選手ももっと走った方がいいとは思いますが。

悪かった点

  1. とにかくパスが繋げない。
  2. 右サイドの酒井(高)選手の判断力に問題あり。
  3. 香川選手が空気だった。

1.については、割り切っていたのでしょうが、繋げるときには繋ぐ努力をする必要があるでしょう。ただそのためには、DFの繋ぐ能力が不可欠です。この試合では、少し余裕のある状況でもDFはクリアをして「安全に」を徹底していました。いささかやり過ぎといったくらいに徹底していました。おそらく監督の指示なのでしょうが、それではレベルアップは望めないでしょう。

「DFはとりあえずクリアしとけ」は小学生でもできることですから。

また、2.の点については、苦言を呈さざるを得ないと思います。酒井(高)選手は少なくとも3回のパスミスをしています。それもフリーでボールを受けて、後方から組み立てている段階で。彼は今回右サイドバックをやっていて、これまでの左サイドとは違うので大目に見ては、という擁護はあるかもしれませんが、これまでも継続的に同様のミスがありました。

最終ラインの選手の判断・技術があやふやだと、たしかに後方からパスを繋いでいくにはリスクがあるので、監督はためらうかもしれません。けれど、サイドバックにパスを繋げる選手を起用すればその問題はクリアできるでしょう。たとえば、浦和の遠藤選手とか適任です。

3.については、香川選手の適応の狭さが表れてしまったといえるでしょう。彼はこれまで、日本代表で「左サイド(MF兼FW)」と「トップ下」と務めてきましたが、いずれもパッとせずいまだに活躍できていません。所属のドルトムントで輝いていた時期はトップ下でした。というわけで彼はトップ下が好きだしそこでの起用を望んでいるでしょう。

しかし、彼が活躍するためには、さらに次の条件が必要になります。

  • フィジカルの強い味方FWの選手が自分の前にいる。
  • 後方から味方があがってきて、パスコースが複数ある。
  • ショートパスを自分にリターンしてくれる味方が必要。

つまり、「周囲が動き回って空いたスペースに飛び込んで、短いパスの交換や短い距離のドリブル・ターンから得点を狙う」そういうプレースタイルが確保できないと持ち味が生きない、限定条件の多い選手なのです。さらに言えば、攻撃を指揮するタイプではなく、限定された局面を打開するタイプのプレイヤーでもあります。

今回のオーストラリア戦では、トップ下で起用されたものの、ボールをもらってもパスコースは前線の本田選手くらいしかなく、自分でボールをキープして味方のあがる時間を稼ぐ・サイドチェンジするなどの味方をサポートする戦術的なプレーは見られませんでした。彼の特性はこの試合の環境では発揮するタイミングがなかったといえるでしょう。

今後の可能性

それにしても、急造のわりには、この試合のフォーメーションは機能していましたね。今まで選手たちはインタビューで「コミュニケーションが課題」と、うまくいかなかった理由を述べていますが、この不整合さは一体なんなのでしょう。

はっきりしたのは、コミュニケーション云々は理由ではないということ。監督が選手を適正なポジションで起用すれば、戦術の熟練度は別にしてそこそこ上手くいくということがわかりました。もっと言えば、どの選手を選ぶのか、選んだ選手をどこで使うのかにはまだまだ余地が残されていること。

しかし、基本的なことがこれだけ出鱈目でもなんとか戦えている点は称賛に値すると思います。

そういう意味で日本人選手は勤勉ですね。

 

ではでは。

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