POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

U-19日本代表|堂安選手にみるG大阪天才の系譜

さてさて。

本日の深夜は、5大会ぶりとなるU-20W杯出場権をかけた一戦が行われます。

この一戦を控えたU-19日本代表は、GLを2勝1分の1位で突破しており、ベスト8でタジキスタンと相まみえるわけです。ここ4大会は、連続でU-20W杯出場権がかかったアジア選手権ベスト8で連敗中。しかしながら現U-19日本代表は2020年の東京五輪の主軸を担うとされる世代。ここで勝利できるかどうかが、東京五輪での成績を左右するといっても過言ではないかもしれない重要な戦いです。是非勝利してほしいものですね。

 

そんなU-19日本代表にあって、結成当初から攻撃の中心選手として期待されてきたのが、ガンバ大阪所属の堂安律選手(18歳)。現在は2種登録選手となっており、トップチームでの出場もすでに果たしています。利き足は左。ドリブルからのシュート、パスに非凡なものを感じさせるプレイヤーです。172cm、70kgとがっしりした体格で当たりに強い点もストロングポイントといえるでしょう。

18歳とトップチームデビューし、各年代の日本代表にも軒並み選出され、まさにエリート中のエリートと呼ぶにふさわしい選手なのだけれども、今大会(U-19アジア選手権)のGL三試合を見るにつけ、あれれ?と思ってしまったところがあったのでメモ的に解説を。

堂安選手のあれれな点

  1. 止まった状態で足元にボールを要求することが多い
  2. 密集地帯にドリブルで突進→ボールロストが多い
  3. プレーのパターンが少ない

 

1.について。

止まった状態で足元にボールを要求することが多い

これはテクニックのある日本人選手の典型的な癖です。敵が来ても交わせる自信があるから足元にボールを要求する。それは構わないのだけれども、相手のレベルが上がれば、すぐに間合いを詰められ体ごと止められてしまう。

幼少期から飛び抜けた技術があると、そういった「王様プレー」が身についてしまう。それが問題です。敵を交わすには、止まった状態からの「ヨーイ・ドン」ではなく、動きながら常に先手を打つ必要があり、それが基本です。

2.について

密集地帯にドリブルで突進→ボールロストが多い

ドリブルに自信があるから、全部の敵を抜き去りたい。それはドリブラーの欲望なのでしょうが、3~4人の密集地帯に勢いのまま飛び込むのはさすがに無謀です。さらにボールを奪われてカウンターを受けてしまえば、攻撃をしているのか相手を助けているのかわかりません。

メッシをイメージしているのかもしれませんが、メッシがドリブルで仕掛ける時、チームメートはボールを奪われることを想定してポジションを取っています。味方がゴール前に殺到しているときに、その選手を使わず、ドリブルを密集地帯で仕掛けるのは、戦術的にアウト。ドリブルの能力は高いのでうまく使い分ける必要があるでしょう。

3.について

プレーのパターンが少ない

これは1.と2.も関係してきますが、堂安選手は、

  • 足元にボールをもらう→ドリブルで仕掛ける(カットイン)
  • 足元にボールをもらう→ドリブルで仕掛ける(カットイン)→ワンツー→ドリブルで仕掛ける(シュート狙い)
  • 足元にボールをもらう→スルーパスを狙う

といったプレーが多い。というかほとんどそれしかやっていない。それが問題です。自分が起点になって、自分で決める。そういう「王様プレー」が体に染み込んでいます。複数の選手が絡むパスワークに入って囮になったり、3人目の動き出しをしたりすることがほとんどない。つまり、「ボールを持った自分」しか想像できていない。反対にボールを持っていないときのプレー(オフ・ザ・ボール)に関心を払っていないように思います。

 

そして、これらの点はこれまで天才と呼ばれたプレイヤー達が克服できなかった点でもあります。ガンバ大阪ユースは才能豊かな攻撃的選手を輩出してきました。かつては、宮本選手や稲本選手など中盤から後ろの選手が日本代表になりましたが、その後、家長選手、宇佐美選手といった華のある選手を日本代表に送り込んでいます。

ただ、家長・宇佐美両選手ともに、運動量が少なく、ボールを持っているときにしか動けない「王様プレー」の体質から抜け切れていません。海外でも出場機会が得られず、A代表でもなかなか活躍する機会がないのはそういう点が深く関係していると思います。

反対に、なぜ最近になって原口選手が活躍しているのか。それは、自分がボールを持っていないときに動けているからです。やや動きすぎでポジショニングに向上の余地はありますが、アベレージは上回っています。つまり「王様プレー」から脱却できたわけです。

しかし、その原口選手はもう25歳。世界的な基準でいえば、このレベルに達するのに時間がかかりすぎたと言えるでしょう。海外のトップレベルの選手は20歳前後ですでにこういうプレーができているわけですから、日本人選手のプレーの成熟度はトップレベルの選手であっても、5年ほど遅れていると考えられます。

前述の家長選手・宇佐美選手については、まだ原口選手の域に達していないと言えます。では、これは個人的な才能の差なのかというと、そうとも言い切れない部分があります。中学生くらいの頃から、オフ・ザ・ボールの重要性について理解させ、効果的なポジショニング・動きを繰り返しトレーニングさせる。攻撃的な選手であっても守備の基本はきちんと教え、できていなければきちんと指摘する。

そういった育成の積み重ねが、正しい習慣を生むのですが、どうもそこが徹底されていないと感じられます。Jクラブの育成組織には、せっかくの才能豊かな選手なのだから、世界基準で判断し「王様プレー」に終始しない選手を、甘やかさずに育ててほしいものです。堂安選手も間違いなく才能豊かな選手なので、今後の正しい成長を期待したいところです。

ひとつ付け加えるなら、堂安選手の3つ年下の久保君(15)はこのエントリーで指摘した「王様プレー」はすでに卒業しています。 →久保君については以下の記事で解説しています。 pov-football.hatenablog.com

それにしても常に下から才能が湧いてくる苛烈な競争ですね。

ではでは。


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