POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

2018ロシアW杯での日本代表を占ってみる

さてさて。

各大陸のW杯予選もいよいよラストスパート。オランダやアルゼンチンなどの強豪国が苦戦するなど、順当のアジア以外は相変わらず厳しい戦いが続いています。

今回は気が早いようですが来年の2018ロシアW杯での日本代表を占ってみようというエントリーです。といってもメンバー予想とかではなく、過去の大会を振り返ってみてGL(グループリーグ)突破/敗退になんらかの共通点を見出して、そうであるならば今度の大会はどうなるのかという類の予想をしてみようという試みです。

GL突破/敗退のデータ分析

さて、日本代表は過去5大会に連続出場しているわけですが、その成績は以下の通りです。

表1:過去の成績

開催年(国) 大会成績 監督
1998(フランス) ×GL敗退(3敗) 岡田
2002(日韓) ○GL突破(2勝1分)→決勝T:1回戦敗退 トルシエ
2006(ドイツ) ×GL敗退(2敗1分) ジーコ
2010(南アフリカ ○GL突破(2勝1敗)→決勝T:1回戦敗退 岡田
2014(ブラジル) ×GL敗退(2敗1分) ザッケローニ
2018(ロシア) ハリルホジッチ

順番からいえば、今回はGL突破となりそうなのですが、そのような単純なリズムで予想ができれば苦労はしません。そこで次に各大会におけるGLの成績をもう少し詳しく集計してみましょう。

表2:GLの勝敗および得失点

開催年(国) GL成績  監督
1998(フランス) ×3敗(得点1/失点4) 岡田
2002(日韓) ○2勝1分(得点5/失点2) トルシエ
2006(ドイツ) ×2敗1分(得点2/失点7) ジーコ
2010(南アフリカ ○2勝1敗(得点4/失点2) 岡田
2014(ブラジル) ×2敗1分(得点2/失点6) ザッケローニ
2018(ロシア) ハリルホジッチ

こうするとGL突破の理由が大分はっきりしてきます。GLで「2勝かつ失点2以下」に抑えられれば決勝T進出できるという分析がなりたちますね。やはりポイントは守備力でしょう。しかし守備力というのはそれだけを取り上げて数値化することが難しい指標でもあります。

たとえば、自分たちが攻撃する時間が長ければ必然的に相手の攻撃時間が短くなり、結果的に失点が少なくなるという考え方もできるわけです。もちろん守ってカウンターが効果的に機能すれば、結果的に守備力が高いとも言えます。

予選突破/敗退の質的分析

そこで、過去に失点が少なかった(GL突破した)代表チームを分析してみましょう。まずは戦い方(ポゼッション的かカウンター的)に着目してざっくりと分類してみることにします。

表3:戦い方とキーワードの分類

開催年(国) GL成績 監督 戦い方 キーワード
1998(フランス) ×3敗 岡田 カウンター
2002(日韓) ○2勝1分 トルシエ カウンター フラットスリー
2006(ドイツ) ×2敗1分 ジーコ ポゼッション 黄金の中盤
2010(南アフリカ ○2勝1敗 岡田 カウンター
2014(ブラジル) ×2敗1分 ザッケローニ ポゼッション 自分たちのサッカー
2018(ロシア) ハリルホジッチ カウンター デュエル

はっきりとわかるのは、カウンター型のチームの方がGL突破には有効だということです。2002年は浅いラインを敷いてプレッシングからのショートカウンターを狙っており、2010年はベタ引きからのカウンターという違いはありますが。

キーワードの分類を付け加えたのは、各チームの狙いがそこに現れると思ったからです。戦術的なキーワードは2002年の「フラットスリー」だけで、あとはフワフワしたキーワードが並んでいますね。ハリルホジッチの「デュエル」は1対1(決闘)という意味なので、戦術ではなくスピリットを表していると言えるでしょう。

さて、現代表チームについてですが、アジア予選の戦いぶりを見れば「カウンター型」であることは明らかです。そうすると、過去のデータからすれば本大会での予選突破は可能であると結論づけたくなってきます。

しかしながら、当ブログは本大会で苦戦するのではないかと予想しています。つまりGL突破の可能性は低いのではないかと(対戦相手に恵まれれば話は別ですが)。その理由を説明するためにもうひとつ別の着目点を導入したいと思います。

表4:アジア予選と本大会の戦い方の分類

開催年(国) GL成績 監督 アジア予選 本大会
1998(フランス) ×3敗 岡田 試行錯誤 カウンター
2002(日韓) ○2勝1分 トルシエ ポゼッション カウンター
2006(ドイツ) ×2敗1分 ジーコ ポゼッション ポゼッション
2010(南アフリカ ○2勝1敗 岡田 ポゼッション カウンター
2014(ブラジル) ×2敗1分 ザッケローニ ポゼッション ポゼッション
2018(ロシア) ハリルホジッチ カウンター カウンター(予想)

*2002年は予選免除のため、本大会前までのチーム作り期をアジア予選と見做しています。

表4には、アジア予選での戦い方の項目を追加しました。そうすると新しい見方ができるようになります。つまりアジア予選と本大会で戦い方を変化させたチームはGLを突破していると言えるのです。そうすると現代表チームは?と疑問符が付くのも当然ではないでしょうか。さらに言えば、戦い方が変化したという現象だけがポイントなのではなく、その裏に隠された効果に着目する必要があります。

対戦相手の裏をかく

それはざっくり言えば対戦相手の裏をかくという効果です。W杯レベルになれば、対戦相手をスカウティングし事前に対策を練るのは当然なのですが、代表チームはトレーニングの時間が十分には取れないので、それほど複雑な戦術を駆使できないし、中心となるメンバーもかなり固定的です。

つまり、対戦相手のやり方は事前にある程度読めるのです。だからこそ、本大会直前にやり方が大きく変化すれば、対戦相手はとまどいます。じつは2002年と2010年のGL突破の要因はここにあるのではと当ブログは考えます。

2002年トルシエジャパンの場合

たとえば、2002年大会の代表チームはアジア予選を免除されており、選手選考と戦術トレーニングに時間を費やすことができたため、2000年のアジア大会では、当時のエース中田英寿を欠きながらも攻撃的なパスサッカーで優勝し、アジアサッカー協会から「史上最強のチャンピオン」と呼ばれるほどの完成度を誇っていました。

しかしながら、その後強豪国とのテストマッチなどでは全く歯が立たず、本大会でのGL突破を義務付けられたトルシエ監督は戦い方の変更を迫られました。最終的に、フラットスリーは継続しつつ中盤に守備的な選手を増やし、ファンタジスタは左サイドに1名だけ配置するという布陣に落ち着きました。

2010年岡田ジャパンの場合

2010年大会に向けた代表チームは当初オシム監督でスタートしました。オシムは「考えながら走る」、「日本サッカーの日本化」を標榜し、ボールも選手も動くサッカーを浸透させていきましたが、不意の病によって交代を余儀なくされました。

アジア最終予選では岡田監督がチームを引き継ぎ、細かくパスを繋ぐ岡田流の「日本サッカーの日本化」をめざしたのですが、本大会前の親善試合で4連敗したことで方針を転換しました。本大会ではぶっつけ本番と言ってよい「ベタ引きの守備+本田圭佑のワントップ」という賭けに出たのです。

意図的な変化か否か

2002年のチームは、2000年のアジアカップ優勝以降、強豪国との対戦を経てパスサッカーからショートカウンター狙いへと大きく変化しました。対戦相手によって先発メンバーを細かく変えるという特徴もあったことから、「大きな変化」を踏まえて「小さい変化」を多少なりとも使えるチームだったと言えるでしょう。

2010年のチームは、ぶっつけ本番でやり方を変えたため、対戦相手はスカウティングが役に立たずかなり戸惑ったと思います。これは意図的な変化ではなく苦肉の策としての博打だったわけですが、結果的に裏をかいた格好になりました。

さて、強豪国は一貫したスタイルを持ちつつも対戦相手によって戦い方を変化させる「対応力」を備えています。それは試合前にたてる戦略や試合中に発生するアクシデントへの対応も含めた対応力なわけですが、日本サッカーはその点で非常に見劣りがします。

ポイントは「意図的な変化」を駆使できるかです。ここでハリルジャパンに目を転じると、「一本調子な縦への速さ」ばかりが繰り返されるその対応力のなさ、つまり「意図的な変化」の欠如に大きな不満と不安を感じざるを得ません。

ハリル監督のこれまでのやり方が本番で劇的に変化することは考えにくいため、対戦相手はきっちりと対策をたててくるでしょう。相手に合わせて変化するという対応力も発揮されたことがないので期待薄です。従って2018年ロシアW杯でのGL突破は難しいというのが当ブログの予想です。

ではでは。


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