POV-football blog ‐サッカーのミカタ-

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サッカー・フットボール・蹴球と呼び方はそれぞれあれど、その見方を中心に、戦術・技術・組織論を展開していきます。

日本代表ロシアW杯出場決定!天敵オーストラリア相手に完封勝利!!

さてさて。

前エントリーで取り上げたように、ハリルホジッチ監督の首がかかったホームでのオーストラリア戦。勝利すればW杯出場が決定する大一番。

緊張感が漂い、日本選手にはバタバタ感がみられましたが、前半と後半の良い時間帯に得点でき、体を張った守備も相まって2-0の勝利となりました。これでロシアW杯への出場が決定。おめでとう日本代表。

メディアにおいては「ハリル続投すべき」とか「みんなよくやった」系の現状肯定前向き発言が花盛りな中、セルジオ越後さんは早速「Jリーガーを軽視しすぎ」「(強化試合と称した)興行マッチで儲けるな」「(協会の)派閥争いはもういい」などの発言で、W杯本戦に向けた警鐘を鳴らしています。 【セルジオ越後】山口蛍、今野、そして井手口…Jリーグ勢がW杯に導いた(サッカーダイジェスト)

そんな中当ブログでは、今回のオーストラリア戦の勝因についてぽつぽつと分析していきたいと思います。その上で解決されていない問題点についても言及できればよいかなと。それではまいります。

勝利のポイントは

90分間走り切れる選手を起用したこと。これに尽きるのではないでしょうか。「乾・浅野・大迫は90分もたなかったじゃないか」という反論もあるでしょうが、与えられた仕事をまっとうするための運動量とスピードを維持した上での交代ですから問題はありません。

これまでは、コンディションの良いとは言えない海外組を先発させたものの90分もたず、なおかつ運動量・スピードともに不足したなかで、ハリルの求めるカウンターアタックを狙い続けるというチグハグさが明らかに見て取れました。

本田・香川・宇佐美選手などがその代表格と言ってよいでしょう。まあ選手にしてみればいつだって試合に出たい欲望はあるわけですから、むしろ起用した監督サイドに責任があると言えるでしょう。しかしながら疑問も湧きます。

どういうことかと言えば、ハリルはやろうと思えば古参の海外組を切ることもできたのにどうして今までやらなかったのか、それともやろうとしても横やりが入ったのかということです。つまり「○○という選手を起用しなさい」という何かしらの圧力があったのかという疑問です。

まあ普通に考えれば「圧力はあった」ということになるのでしょうが、日本サッカー協会の担当者とスポンサーの方の言質をとったわけではないので「当ブログでは、そうした可能性があるのではないかと勝手に妄想している」というあたりで留めておきましょう。

というわけで勝利のポイントをもう一度繰り返しておくと、《90分間走り切れる選手の起用》になります。つまりコンディションの良い選手を優先的に起用するという当たり前のことですが、今後はこうした選考がスタンダードになっていって欲しいものです。

ちなみに当ブログでは、運動量の足りない本田選手について以下の記事で言及しています。 日本代表|W杯最終予選|イラク戦評(1)

改善すべきポイントは

たくさんあります。というかありすぎで、それは観戦された方々も同様にお考えでしょうが、当ブログでは以下の3点に絞って取り上げてみたいと思います。

  1. アップテンポオンリーのパスリズム
  2. ポスト長谷部問題
  3. サイドバックの展開力

1.アップテンポオンリーのパスリズム

ハリルサッカーにおいては、前線からの追い込みと奪ってからスピードを落とさないカウンターが基本戦術ですが、それを90分間続けられないことはこれまでで証明済みです。つまり体力が持たないということですね。アップテンポオンリーのパスリズムでは起こりがちな現象です。

本来このパスリズムは、中盤の3人(この試合では、長谷部・山口・井手口選手)がコントロールすべきなのですが、とくに山口選手は「相手からボールを奪う・前に出る・はたく」ということはできても、「落ち着かせる」ことができません。井手口選手にもやや足りない部分ですが、山口選手にない展開力があります。

では、ベテランの長谷部にリズムコントロールができたのかと言えばそれは失敗に終わったと言うべきでしょう。とくにボールを落ち着かせようとしながら相手にボールを奪われてしまうターンオーバーが数回ありましたが、これは決してやってはいけないミスです。

2.ポスト長谷部問題

長谷部選手のターンオーバー問題はそのまま、ポスト長谷部問題につながります。つまり現行日本代表において「アンカー」と呼ばれるポジションにふさわしい選手が長谷部選手以外に見当たらないのです。

アンカーには、180cm程度の身長がありディフェンス能力に優れつつある程度パスも捌ける能力が求められます。あるときはCBのサポートに入り、中盤ではバランサーとしての振る舞いが求められます。

もちろん今野選手とか阿部選手は適格者なのですが、彼らより若い世代の20代には見当たらないと言った方がより正確でしょうか。もっとも今野選手については長谷部選手に比べればリズムコントロールを不得手としています。

オランダでプレーしている小林選手などは適任のように思いますが、もともとはトップ下で攻撃的な性格ですし、後方支援というポジション的性格との相性については疑問があります。個人的には柏でCBを務めている中山選手などを試してほしいところです。

この辺りは、Jリーグヨーロッパリーグとの差が顕著に表れる部分です。日本では180cmそこそこでもCBが務まりますがヨーロッパでは185cm前後は求められますし、アンカーについてもそうした規格が求められます。世界基準を考えれば、CB適格者に「アンカー」もやらせておくという育成が日本においては必要になるでしょう。

3.サイドバックの展開力

現行の日本のサイドバックの選手は、大外を駆け上がってクロスボールを放り込むというタイプの選手が多いように見受けられます。が、逆に言えばそのパターンに固執しすぎに思えてしょうがありません。クロスボールが手前のDFに引っかかるのも大きな問題です。

さて、世界レベルのサイドバックでいえば、バイエルンのラームやレアルのマルセロなど、ゲームメークに加わるタイプの選手が増えてきています。そのうえで自分の特徴を出すのが超一流なのですが、日本人サイドバックのゲームメーク能力不足は深刻です。

とくにこの試合での酒井選手はまずいプレーが多かったです。酒井選手の判断の遅さなどは度々当ブログで指摘しているのですが、ハリル監督はその身長(185cm程度)を評価して起用しているように思います。

つまりセットプレーにおけるヘディングの競り合い力を重要視しているということです。このあたりも日本人選手の体格問題が表面化してきますね。じつは走れない本田選手を起用し続けたのもヘディング力を重視していたからという側面があります。 →とはいえ、それ以上に守備に穴が空くことがマイナスになっていました。

日本史上もっともバランスの取れたサイドバックは内田選手でしたが、大きい怪我や年齢のことも考えれば、酒井選手がゲームメーク力(判断力)を身に着ける形の成長をする必要があるでしょう。ここは本当に重要なポイントです。以下のエントリもご参考までに。 日本代表|W杯最終予選|イラク戦評(2)

 

ほかにも色々と指摘はできますが、コンディションの良い選手たちを起用してカウンターアタックを繰り返せば、オーストラリアには勝てるというポテンシャルはあるわけですから、あと半年くらいをかけて一部の選手たちの「やりたいこと」を追求するのではなく「やるべきこと」を現実的に追求していってほしいと思います。

それにしてもこれまでの3年間はいったいなんだったのか。明らかにザッケローニ時代よりはレベルは下がっているし、ハリル監督の今後もどうなるかわからないし。次回の4年間はちゃんと日本サッカー協会に仕事してほしいものです。 ハリル監督親族末期がんだった、W杯指揮は不透明(日刊スポーツ)

ではでは。


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